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2006.05.29

復活しないマーケティング予算、混乱の現場は・・・

出典:「見本市展示会通信」 / 庭山一郎

企業はもう名刺を集めるだけの展示会出展を必要としなくなっている。売り上げに結びつかない経費など払うつもりはないのだ。だから景気が回復してもマーケティング予算は復活しない。その理由は・・・

何故か復活しないマーケティング予算

15年以上続いた不景気がようやく回復の兆しを見せ始め、採用コストを含む企業の販売管理費は増加している。

しかし、残念ながらマーケティング部門の予算を増加させている企業は少ないし、最も売り上げに貢献するはずの展示会やイベント・セミナーなどへの予算は削減されたまま復活させる企業は非常に少ない。

これは企業内でマーケティングを担当してきた側にも責任があるかもしれない。マーケティングはセールスの前工程である。

それなのにマーケティング活動が受注にどう結びついているのか、いないのか、費用対効果では同業他社と比較してどうなのか、などの検証をしないまま予算を使い続けてきた。その結果、営業サイドからの支持を失い、予算を大幅にカットされている企業が多いのだ。

本年4月に施行された個人情報保護法で、販売パートナーやグループ企業といえども資本的な第三者から個人情報を譲渡してもらうことは難しくなったし、安易にリストを購入することはさらに危険で難しくなった。その点から見ても、ターゲットが集まる展示会に出展し、そこでパーミッションを取りながら見込み客の情報を収集することは、従来よりもさらに重要となったのに、現実には展示会への出展やセミナー関連の予算はどんどん削られている。

今まで展示会場のメインストリートに大きなブースを出して華やかさを競っていた企業が出展しなくなった理由と問題点を分析しよう。

企業が展示会に求める役割の変化と、混乱している現場

2〜3年前から企業が展示会に求める役割が明確に、しかも急激に変化している。残念ながら各企業の展示会の担当者、主催者、広告代理店、制作会社などの現場にいる人々は必ずしもこれを正確に認識していないように見える。

昔から企業が展示会に求める役割には2つの面があった。「ブランディング」と「見込み客獲得」である。

この内「ブランディング」は主に競合や販売代理店などの「業界」に対して「元気」である事の証明の意味合いが強い。

例えばメーカーの場合は自社の販売代理店に対し「自社の予算を使い、こんなにも販売への努力をしている」ということを証明し、そのブランディングによって販売代理店を支援し、また有望な代理店を確保しようとしていた。また、代理店はメーカーとのパイプの太さや実際の導入事例をアピールする事で同じ商品を販売している競合との差別化を試みていた。

恐らく数年前までは展示会に出展する目的の70%〜80%をこうしたブランディングが占め、残りの20〜30%が見込み客の獲得だった。だから展示会にはお祭り的な運営が求められた。大きな人目を引くブースデザインに派手なプロモーションビデオ、綺麗なコンパニオン、ノベルティにアンケート・・・こうしたものが展示会の主役だった時代が10年以上も続いたのだ。

ここ数年でかつて展示会のスターであった優良企業が展示会へ出展しなくなった理由はここにある。つまり展示会へ出展する目的が主に業界向けに「元気」であることを証明するためであれば、予算の削減によりブースの小間数を縮小することは、わざわざコストをかけて「最近元気が無い」ことを証明することに他ならない。それならば「今年は出展しない」という判断になっても当然である。

しかし、企業経営者の「本当の思い」は展示会に出ないことではない。多くの経営者は自社の情報発信と他社の情報収集の両方の面で展示会を否定していない。だから「売り上げに貢献しないのなら」または「費用対効果が明確にならないのなら」、「営業サイドが評価しないのなら」という枕ことば付で展示会の経費を削減しているのだ。

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