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2006.05.29

1200枚と5300枚の名刺データは質において同等なのか?

出典:「見本市展示会通信」 / 庭山一郎

日本の展示会の名刺やアンケートの収拾法は「量より質」か「質より量」か? シンフォニーマーケティングが提唱してきた仮説を実証できるのか? この検証実験の結果と、そこから導き出される結論とは・・・

仮説と自社で行った検証実験

「日本の展示会では質より量である」。この仮説を私達は実際に検証している。弊社は東京ビッグサイトで毎年開催されているIT系の大型ビジネスショーに5年間続けて出展していた。そこで実験を試みたのだ。

前の年、弊社はその展示会に4小間で出展した。ブースの中にたくさんの説明パネルを置き、デモ機も6台用意し、専門知識を持ったスタッフを多く配置して3日間で約1200枚のアンケートを収集した。4小間の割にはよく集めた方かもしれない。社員の人件費を除いた展示会の総コストを獲得した名刺の数で割った「見込み客の獲得単価」は¥3400だった。これは弊社のクライアントと比較しても安く上がっている方である。

その翌年、同じ展示会に今度も4小間で出展した。ブースの制作予算も同額だったし、場所も導線的にほぼ同等の位置だった。ただしブースの中身と運営はまったく変えた。説明パネルは数枚掲示したが、デモ機は2台だけにし、専門知識を持ったスタッフは配置しなかった。スタッフはブースの外に配置し、名刺をもらうことだけを目的にした。商談もしなければ、デモも見せない。「ここは何のブースですか?」とスタッフに聴いてきた人だけをブースの中に案内して対応した。そういう極端な運営手法により3日間で5300枚の名刺を集めた。1小間で1325枚の名刺を集めたことになる。これは恐らく1小間当たりの名刺収集枚数としては記録的ではないだろうか。見込み客の獲得単価も¥700強であった。弊社のクライアントの例を見ても展示会での見込み客獲得単価は¥10000を越えることも珍しくない。かなりオペレーションを工夫しても単価¥4000程度は掛かってしまうから、この¥700は驚異的なコストパフォーマンスである。

驚きの実験結果

弊社は見込み客リストにメールを一斉配信し、誰がそのメールに反応してウェブサイトを訪問したかを正確に個人特定し測定できる仕組みを持っている。これを使って、前年に単価¥3400を掛けて丁寧に収集した1200人と、名刺収集だけに極端にフォーカスした運営により単価¥700で集めた5300人を比較してみたのだ。

その結果メールに反応してウェブサイトを訪問する数(クリック率)と、セミナーに参加申し込みをする数(コンバージョン率)の2つの指標で比較してみると、この2つのリストは質的にまったく遜色が無いことが判明した。どちらもクリック率は5〜7%であり、そのウェブサイトを訪問した人を母数にしたセミナーの参加率もどちらも8〜10%だった。言うまでもなく、営業が欲しい有望見込み客は「率」ではなく「数」である。数が欲しいのであれば母数は多い方が良い。私はこの検証で日本では「質より量」であることを改めて確信した。

法人営業に関しては、日本は欧米とかなり異なる商慣習の中にいる。オラクルのように世界中でダイレクトセールスを展開している企業が日本でのみ徹底したパートナー販売を行っている例を見ても、日本というマーケットの特殊性は判ると思う。

だから日本の商慣習に合った展示会の活用を模索することがどうしても必要なのだ。

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