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ホーム > コラム > DatabaseMarketing in U.S.A. ー最新NYマーケティング事情ー > データベースマーケティングの統合理論 〜The Unified Theory of Database Marketing by Ruth P. Stevens〜
2006.05.29
“法人マーケティングで最も影響力のある米国人100人”の一人、ルース・スティーブンスによるBtoBデータベースマーケティングの最前線レポート、「データベースマーケティングの統合理論」をご紹介します。
データベースマーケティングは、非常に強力なビジネスツールですが、その先進国であるアメリカのビジネスシーンでもこのデータベースマーケティングは何が出来るのか、何が出来ないのかを正しく理解していない人が、まだまだ多く見られます。
今回は、ルース・スティーブンス氏が書いた「Database Marketing 101」より「データベースマーケティングの統合理論」をご紹介いたします。
CRM、データウェアハウス、one-to-one マーケティング、データマイニングとは何でしょうか。数多くのテクニックが、経営者の時間、注目、そして投資の対象となっていますが、それらはすべて顧客情報を中心として構築されています。そこで、データベースマーケティングによって最近50年間に開発されてきた強力なアプローチのいくつかを取り上げ、それらをわれわれのウェブビジネスに適用して大量の価値を生み出すという新しい機会が現在あります。
しかし、データベースマーケティングに何ができるかということに関して、多くの人が誤解している点があります。
そこで、データベースマーケティングにできることとできないこと、データベースマーケティングとは本当は何なのか、なぜ非常に強力なのかに関して、いくつかの基本原理を述べたいと思います。
注意すべき最初の点は、データの利用可能性です。マーケティング担当者が扱うことができる顧客や潜在顧客に関する情報の量は、非常に限られています。顧客の取引履歴、収集したりレンタルしたりした人口統計データ、それに賢明であれば販売促進活動の履歴があるでしょう。
データベースマーケティングは、 次の3つの主要なマーケティングの応用に集約されます。
プロファイリングは通常、顧客獲得を支援します。この応用は、現在の顧客または最良の顧客を分析し、その特徴を特定します。これは「プロファイル」と呼ばれ、クラスター型の解析(CHAIDまたはCART)や多変量回帰分析によって生成されますが、これらの解析ではさまざまな特徴が正または負の相関を持つものとして特定されます。
現実の顧客または理想的な顧客に関してこれらの特徴がわかったら、そのモデルを潜在顧客の広大な宇宙に適用し、もっともマッチするものを選択し、それらの潜在顧客とコンタクトを取ることができます。理論的には、そして通常は実際にも、これらの「類似」とモデリングされた潜在顧客は、選択されていない広大な潜在顧客全体よりも、よい顧客になる可能性がずっと高いです。プロファイリングは、分析論を用いて強力な潜在顧客を特定し、興味のない人に対して宣伝することに浪費される可能性のある費用を大幅に節約することができます。
このアプローチを逆に用いて、たとえば収益性の悪い顧客をプロファイリングし、これらの特徴を用いて望ましくない新規顧客を抑制したり取引を行うことを避けたりすることもできます。
この応用は、おもに顧客維持マーケティングに使用されます。ここでの考えは、すべての顧客が等しい価値を持っていたり、同じような好みや購買パターンを有していたりするわけではないということです。そこで、賢明なマーケティング担当者であれば顧客ベースを定期的に解析し、それをグループに分け、それぞれのグループを異なる方法で扱うことができるようにプログラムや方針、プロセスを設定して、顧客がよりたくさん購入したり、より長く滞在したり、その他のマーケティングの目的を達成する可能性を向上させます。
伝統的なセグメント化の分析論はRFMですが、この方法ではどれくらい最近に取引があったか、取引の頻度、および金額に基づいて、顧客ベースを定期的にグループ化します。RFMはたいていの販売活動で手近に得られるようなデータを使って簡単に実施でき、個々の顧客の価値を特定することにおいて非常に強力です。
ビジネスの必要に応じて、他にも何百ものセグメント化の方法があります。購入チャンネルの好み、セールスカバレッジ、またはこれまでの購入内容によるセグメント化や、地理、言語、または人口統計的な特徴によるセグメント化などです。必要なのは、セグメントが本当のものであること、すなわちあるセグメントに属する人々が他のセグメントに属する人々と異なるということ、およびセグメントが有用であること、すなわち人々をこのような方法でグループ化することに本当のビジネス価値があるということだけです。
この応用はプロファイリングの一種に過ぎないと主張する人もいるかもしれません。しかし、これはデータベースマーケティングの概念全体にとって、非常に重要な価値をもたらすものであるため、私は区別します。
予測的モデリングは、顧客または潜在顧客全体の中で、あるマーケティングキャンペーンやオファーに反応する可能性がもっとも高い人々を特定するために使用されます。この方法では、購買者の特徴だけではなく、購買または反応の傾向も考慮します。アップセルやクロスセルに最適です。
予測的モデルは、類似物を発見するプロファイリングで使用されるものとよく似た、簡単な概念に基づいています。まず、たとえばある製品を実際に購入した人や、あるチャンネルから購入した人、われわれとの関係の中のある特定の時期に購入した人を特定します。これらの顧客の特徴を特定しますが、これにはその顧客が誰であるかということだけではなく、いつ、どこで何を購入する傾向があるかということも含まれます。それから、これらの特徴を他の顧客に適用して、キャンペーンやプログラムに反応する可能性がもっとも高い潜在顧客を探します。
重要なことは、データベースマーケティングは非常に単刀直入であり、非常に意味があり、強力なマーケティングテクニックであり、よりよく理解する価値があるということです。
Hiroko Hatanaka プロフィール
NY在住。NYの大学でダイレクト・マーケティングを学び、エイボンや英国資本の高級トイレタリーなどのマーケティングを手掛ける。現在はニューヨークの広告&PR代理店であるIWグループに所属。
ルース・スティーブンス(Ruth P. Stevens) プロフィール
コロンビア大学客員教授。
イーマーケティングストラテジー社 代表取締役。
1986年コロンビア大学経営大学院卒業、MBA取得。タイム・ワーナー社、ジフ・デイビス社、IBM、NatWest Group社などを経て、2000年6月にイーマーケティングストラテジー社を設立、代表取締役に就任。1998年よりニューヨーク大学でダイレクト&インタラクティブマーケティング修士修了プログラム、2002年よりコロンビア大学経営大学院の客員教授。BtoBのデータベースマーケティングの第一人者。