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2021.10.27

SIerがコト売りに転換できない2つの決定的な要素

出典:ZDNet Japan / 庭山一郎

最近、日本企業の経営者が書く中期経営計画の中に必ず入っている2つのキーワードが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「コト売りへの転換」だそうです。これはIT産業やその中核であるSIerも同じなのですが、コト売りへの転換に関してはまったく進んでいません。その原因はコト売りのメカニズムが正しく理解されておらず、転換するために必要な2つの決定的な要素が揃っていないからです。 その2つの要素とは【ソリューションブランド】と【課題探知能力】です。

ソリューションブランド

モノ売りからコト売りに転換しようとした時に経営者が真っ先に取り組むことはスキルアップだそうです。スキルアップ自体簡単なことではありませんが、営業がスキルアップしたからと言って顧客からのイメージがすぐに変わるわけではありません。「出入りの業者」というポジションでフットワークと価格が評価されていた企業の担当者が、いきなりコンサルタントのようにスタンスで課題を指摘したところで誰も話を聞いてはくれないでしょう。必要な事は、その会社がどんな得意技を持っていて、どんな課題を解決した実績を持ち、なぜそういう課題を解決できるのか?という【ソリューションブランド】なのです。
弊社ではBtoB企業のブランドを

  1. 企業ブランド

  2. 製品/サービスブランド

  3. ソリューションブランド

と分類して考えています。
企業ブランドは文字通りターゲットから見た企業名の認知で、ある課題を解決しようとした時に担当者の頭にその企業名が頭に浮かぶか、というものです。非情に細かい塵が多い環境で作業員の健康を守ろうと考えている人の頭に3Mという企業名が浮かべば、3M社のWebに行くことで素晴らしい機能を備えた防塵マスクを見つけることが出来るでしょう。
製品/サービスブランドも同様で、ある課題を解決しようとしている担当者の頭に製品やサービスの名前が浮かべば商談化に繋がります。実はこの企業ブランドと製品ブランドはどちらかだけでも十分に用が足ります。社内にサーバを置くのはもう嫌だと考えている情報システム担当役員の頭にAWSというサービス名が浮かべば良く、そのサービスを提供している企業がアマゾンという社名だと知られている必要はないのです。

ただし、社名であっても製品/サービスであっても、商談を創るためにはそれに【ソリューションブランド】が紐付いていることが重要です。これは「その企業や製品/サービスが、なにが得意でどういう課題を解決する時に役に立つのか」という認知です。これが無ければ社名やロゴが知られていてもほとんど意味はありません。
Gartnerという企業があります。リサーチ&アドバイザリーファームというカテゴリーの企業で、ビジネスパーソンならば誰でも社名やロゴは知っていると思います。それはこの会社が社名ブランドに長年投資を続けてきたからです。しかしこのGartnerが「何が得意で、どういう課題を解決してくれるのか」はほとんど知られていません。この会社のレポートやアナリストとのミーティングを利用している企業を除けば、時折、新聞紙面に半導体やサーバの需要予測が掲載されているリサーチ会社だと思われているのです。多くのSIerも社名やロゴばかりにお金を掛けていますが、ソリューションブランドは認知されていません。その企業が「何が得意なのか」が判らなければ何も相談できないものです。御社は何が得意ですか?と質問すると、SIerの方は「弊社はシステムインテグレーターなので何でも作れます」と言いますが、「何でも出来る」という事は「何もできない」のと同義です。人は得意技に惹かれて相談をするものです。

このように、企業ブランドや製品/サービスブランドばかり高めても、肝腎のソリューションブランドが認知されていなければ健在化したビジネスを営業が足で拾い集めるという従来のスタイルから抜け出すことはできず、コト売りには転換できません。顧客から相談相手として認識されるためには「何が得意か」「どんな課題が発生したら門を叩くべきか」を認知してもうらしかないのです。

課題探知能力

【ソリューションブランド】の認知と同じか、それ以上にコト売りへの転換に必要な要素が【課題探知能力】です。これを時間軸で説明したものが下の図で、コト売りの商談をしようと思えば、モノ売りの商談が発生する1〜3年前に顧客とコンタクトして商談を開始しなくてはなりません。

モノ売りからコト売りへの転換

モノ売りからコト売りへの転換

この図は、BtoB企業が何かを開発・導入するプロセスを時系列に示しています。BtoBでは何かのシステムを開発し、導入することは目的ではなく手段です。BtoCとの大きな違いはここにあります。BtoCでは購入し、所有すること自体が目的化する事が多く、その理由で法定速度以上のスピードが出る自動車や、めったに行かない別荘、しばらく着ない服、数年間身に付けていないジュエリーなどが普通に存在します。しかしBtoBでは購入に企業のお金を使い、「稟議」というプロセスが存在するため、、解決すべき課題やヘッジすべきリスクが無ければ稟議が決済されることはありません。この図の中でコンペ(競合入札)に指名されてオリエンテーション(説明会)に呼ばれ、そこでRFP(Request for Proposal:提案依頼書)を貰うことができれば受注のスタートライン立った事を意味します。日頃から顧客担当者と接触し、自社の実績や技術などをアピールし、業界内でもせっせと交流をすることでコンペに参加できるチャンスを貰えます。これだけでも大変な努力が必要であり、今までの「モノ売り」とはこうした活動を指しました。しかし、ここで受注を獲得するには、最も安い見積もりを出すか、最も短い納期を提案するしかありません。いずれにしてもビジネスとしてうま味は少なく、プロジェクトによっては赤字に陥ったりします。

そこで経営者はこうしたモノ売りから「コト売り」へのシフトを模索するのですが、それには顧客企業内で発芽した課題を発見する仕組みが必要です。顧客企業の奥深くでひっそりと発芽し、未だ競合が誰も気がついていない顧客の課題を発見し、図のように、そのタイミングで的確にアプローチしなければなりません。これには【課題探知能力】を持っていなければ不可能であり、それが出来る唯一の仕組みがデマンドセンターなのです。デマンドセンターはMA(マーケティングオートメーション)をプラットホームにして顧客情報を統合管理し、顧客の属性情報と行動情報から、どの企業のどこの事業所のどんな部門に、どんな課題が発生し、それを解決するために誰が情報を収集しているのかを探知します。このデマンドセンターを持っていない企業は営業という数少ないセンサーしか使えませんから日頃接していない部門の課題を発見する事は不可能です。コト売りに転換するのは実質的に不可能で無茶な話と言えるでしょう。

しかも、デマンドセンターは同時に【ソリューションブランド】の認知向上も得意としています。デマンドセンターのデータマネジメントと、データ毎に的確なコンテンツを発信し、その反応をスコアする機能を使ってソリューションブランドの認知を確実に上げることが出来るのです。弊社が20年以上前からデマンドセンターの構築と正しい運用を提唱してきた理由がこれなのです。