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2021.02.22

マーケティングを投資に仕訳できない企業はもう生き残れない

text:シンフォニーマーケティング代表取締役 庭山一郎

近年、日本企業もようやくマーケティングの重要性に気がついて、マーケティング部門を作り、予算を与え、その予算でMA(Marketing Automation)CMS(Contents Management System)BI(Business Intelligence)などのツールを導入し、イベントに出展し、キャンペーンを展開するようになりました。これ自体は良いことなのですが、私はこれらの企業の中で近い将来大きな差が付くだろうと予想しています。

それは、マーケティングを企業戦略の根幹に位置づけ、マーケティング予算を「投資」として仕訳している企業と、マーケティングを戦術レベルに位置づけて予算も「経費」として仕訳している企業の差です。

デマンドセンターと呼ばれるBtoBマーケティングのインフラの評価軸の世界標準はROMI、つまり「マーケティング投資回収率(Return On Marketing Investment)」です。「マーケティング経費回収率(Return On Marketing Expenses)」ではありません。

これは言葉遊びのようで実は重要な意味を内在しています。投資として資産計上していないものは会社の財務諸表には次年度以降存在しません。存在しないものの価値を問われることはなく、メンテナンスに経費を使うことも正当化できないのです。
BtoBマーケティングで最もお金が掛かるのはリード(顧客・見込み客)情報の収集です。展示会の出展、SEO、Web広告、名刺デジタル化、集客目的のセミナーや共催イベント、内見会などです。こうした活動の対価として収集されたデータを資産として計上しておけば、貴重な資産をメンテナンスする費用は当然必要になります。しかしもし単年度で損金処理されてしまえば存在しない資産となり、そのメンテナンスに費用を発生させることが難しくなります。事実を見れば顧客データはメンテナンスしなければあっという間に劣化し腐っていく管理の難しい資産なのです。

展示会を例に話しましょう。今はコロナで出店も集客も難しい時期ですが、日本企業のリードジェネレーションの代表的な活動は展示会に出展し、名刺やアンケートを収集することでした。しかし、BtoBにはマーケティングとセールスで2段階のリードタイムがあります。展示会で収集してからアポイントの形で営業に渡すまで6ヶ月〜24ヶ月、そして営業が案件化しても受注まで6ヶ月〜24ヶ月、さらに納品まで3ヶ月とすれば、展示会で収集したリードからの売上げを計上できるのは最短で15ヶ月後、最長だと50〜70ヶ月後になります。
もしこれを単年度の経費で処理して、売上げやそこから経費を引いた利益をリターンとしたら、展示会のROIは最悪です。リターンはゼロにしかならないからです。そしてその利益を生まないデータのメンテナンスにお金を使うことが正当化できるはずもありません。そこから導き出される結論は「展示会など出る意味は無い」ということです。

しかし、これが正しい判断でしょうか?

私の会社はもう30年以上顧客企業と一緒にデータを管理し、分析しています。事実として書きますが日本の展示会は売上げにとても貢献しており、特に製造業、次いでIT産業については社内で把握されているよりはるかに多くの受注と強い相関を持っています。受注に至る一里塚である、メール反応、資料請求、セミナー集客、デモ、ラウンドテーブルなどは展示会収集データ無しでは成立しない企業が多いのです。それを貢献無しとして「展示会など出る意味は無い」という間違った結論を導き出す理由はコストの仕訳が現実と乖離しているからです。

もうひとつ、マーケティングに関する教育・研修費用も私は資産計上すべきだと考えています。優秀なマーケターこそこれからの企業を守り、未来を創るための経営資源であり重要な資産です。これも単年度で成果が出るものではありません。こうしたスキルに対するコストを資産計上することで、意味の無い人事ローテーションからマーケティングを外すことが出来るようになります。マーケティングの専門知識を学ばせた者を総務や購買にローテーションするくらい無駄な資産管理はありません。マーケティングナレッジに対する継続的な採用・研修は最も戦略的な投資なのです。

もちろん、税法上ではこうしたコストを償却資産に計上するのは難しいでしょうし、会社法でも損金処理を求められるでしょう。しかし、管理会計(Management Accounting)上であれば、これらを償却資産として認識し、その資産のメンテナンス費用は当然費用計上できるはずです。

日本企業のBtoBマーケティングの先進国との大きな遅れに追いつくためには、経営者のマーケティング投資に関する考え方を根本的に変える必要があります。そのために管理会計の仕訳を経費から資産に振り替える事もきっかけのひとつになると私は考えています。