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2020.06.22

コロナ減速を食い止める。「STP」が握る企業の未来とは

text:シンフォニーマーケティング代表取締役 庭山一郎

新型コロナウィルス感染症の影響で、事業計画の変更や再編を迫られている企業も多いでしょう。このタイミングこそ、勝てる土俵を定義するSTPを行うべきという提言です。

フィリップ・コトラー博士がSTP戦略を提唱してもう50年が経とうとしていますが、私はこのフレームの価値は未だに色褪せていないと考えています。多くの学者や実務家がこれに変わるフレームを発表し、STPは時代遅れだとこき下ろしていますが、STPにとって代わったフレームワークは私の知る限り未だありません。

  • 【Segmentation】市場の細分化。属性や状態などで市場を細かく分類するプロセス

  • 【Targeting】細分化した市場の中で勝てる土俵を探すプロセス

  • 【Positioning】選択した市場の中でどういったポジションを取るかを説明し、宣言するプロセス

判りやすく言うなら「事業や製品やサービスが勝てる土俵を定義する」というものです。専門性の高いBtoBの事業や商材の場合「勝てる土俵」は大抵小さいものです。

私は新型コロナで景気が減速し、事業計画の見直しや縮小、リストラクチャリングなどを考えなければならないこのタイミングで、STPを実施すべきだと考えています。
その理由は以下の2つです。

1. 市場環境が変わったから

そもそも市場を細分化して勝てる土俵を探すという作業は、数年おきに行うべきものです。市場は常に変化しています。新型コロナやそれに起因する景気の影響ばかりで無く、新技術もあれば新たな競合の出現もあるでしょう。そうした市場環境の変化にも関わらず変化の前に定義した市場でノンビリしていれば、座して死を待つようなものでしょう。
私がマーケティングの重要なフレームワークである「ホールプロダクト」を教える時に使っていた、ソニー陣営と東芝陣営で行われたビデオ戦争のケースは数年前に使えなくなりました。レンタルビデオショップを知らない世代が出てきたのです。フロッピーディスク、IBM/AT互換機、PC-98などはもはや大学院の授業ですら使えません。時代はどんどん変わるのです。

2. 勝てない土俵を定義するチャンスだから

STPは「事業や製品やサービスが勝てる土俵を定義する」と説明しましたが、これは同時に「事業や製品やサービスが勝てない土俵を定義する」ことでもあります。STPを今やるべき理由としてはむしろこちらが重要です。極論すれば勝てる土俵以外はすべて「勝てない」か「勝ちにくい」か「勝っても守れない」土俵なのです。乗るべきではありません。

日本企業は勝てる土俵を探すのは得意ではありませんが、一度上がった土俵から降りるのもとても苦手です。製品ラインナップを70持っている企業で、黒字は半分以下と言われたことがあります。赤字の半分から撤退すれば高収益企業になれるのですが、「未だ顧客がいる」「代理店がいる」「工場がある」「苦労してきた先輩社員がいる」などの理由で捨てることが出来ないのです。赤字事業を支えるために新製品や新サービスを次々にリリースしますから、ラインナップはどんどん増えて、相変わらず大半は赤字商材という事になります。

だから今なのです。今手を打たないと本当に危ないことになりますし、今なら許されます。

日本企業は、事業や製品の取捨選択の時にはプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)プロダクトライフサイクルマネジメント(PLM)を使うことが多いのですが、これらは事業や製品を見るのに対してSTPは市場を見ます。その市場が勝てる土俵であるならば、徹底的に製品を強化するも良し、M&Aで製品や技術を買っても良いと思いますが、その市場が勝てない土俵であれば製品に投資する意味はありません。

マーケターが会話すべきなのは社内でも製品でもなく、いつも市場なのです。