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ホーム > インタビュー > スペシャル対談[日本オラクル株式会社] Oracle Eloquaが日本に来て約2年 BtoB企業の「現状」と「これから」(後編)

今年4月にラスベガスで開催された「Modern Marketing Experience 2016」はABM(アカウント・ベースド・マーケティング)一色でした。なぜ、今ABMなのか?どのような概念で、何を実現するのか。日本のBtoB企業にとって、このABMは強力な武器となるのか否かを解き明かしていきます。

ABM一色だった「Modern Marketing Experience 2016」
─今年の4月にラスベガスでModern Marketing Experienceというイベントが開催されていました。これはどのようなイベントなのでしょうか。

塚越氏:10年以上続いているイベントで、BtoBおよびBtoCで最先端のマーケティングをやっている方々を集め、Oracle Responsys、Oracle BlueKai、Oracle Eloquaなどの最新事例を紹介するほか、ユーザー様のカンファレンスや表彰を行います。今年はマーケティングだけで、Oracle Marketing Cloudに強い興味を示し、情報収集をされている企業のほか、エンドユーザーとエージェント合わせて2,800名が参加しました。
本イベントでは、Oracle側の製品ロードマップや新規発表などの情報発信だけではなく、エンドユーザーの方がマーケティングの設計や業務プロセスなど、自分たちが実施しているマーケティングの深いところまで披露するセッションも多数あり、それに対するQ&Aも非常にレベルが高いのが印象的でした。

庭山:アメリカの主要なマーケティングエージェンシーはほとんど来てましたね。アメリカの場合MAが入っているのは当たり前になってきているので、今の旬はABM(アカウント・ベースド・マーケティング)ですね。DemandbaseやLattice、Mintigo、6senseなどのセッションは立ち見がでるくらい盛況でした。

─ABMの実情はどうなっているのでしょうか。

庭山:ABMのプレイヤーはどこもまだすごく小さいですね。6senseにしてもあれだけ有名でもまだすごく小さいし、LatticeやDemandbaseにしても小さな会社ですね。各社のCEOとミーティングをしましたが、誰に聞いても非常に忙しくて、日本も興味があるようですが今すぐには難しい状況のようです。アメリカ国内での競争が激しく、ヨーロッパもカバーしないといけないとなると大変ですね。

ABMが日本のBtoB企業にもたらす可能性とは
─日本でもABMという言葉が流行り始めていますが、概念としてそこまで新しいものなのでしょうか。

庭山:マーケティングからみたら新しい概念です。実は、アメリカでも日本でも、営業サイドは昔からアカウントベースなんですよ。マーケティングも評価軸をMQLではなくSALにする場合、放置されてしまうと評価にならない。そうすると営業が欲しいリストを出す必要があり、そこで営業はアカウント単位で見ていることにようやく気づいたということです。だから今更だと感じている人は、アメリカにも日本にもいっぱいいます。
それがどうして今アメリカでこんなに注目されているかというと、Cクラスと言われるキーパーソンだけを狙うマーケティングばかりやり過ぎていたんです。本当は意思決定者はもっとたくさんいるし、1人の人間が何でも決めるわけじゃない。そういう反省があって、ABMが注目されました。
日本でもこれからブームがくると思いますが、日本の需要は全く異なります。日本は製品オリエンテッドで、1つの企業で複数の製品事業部がある場合、横の連携がありません。ある事業部ではクライアントになっている企業でも、他の事業部ではターゲットなのにアプローチできていない企業だったりします。日本企業は、縦糸は強いけれども横糸は弱いんですね。この横糸が何かというと、組織はデマンドセンターで、概念はABMなんです。だから絶対にMAをプラットフォームとしたデマンドセンターがないとABMは実現できないんです。

塚越氏:横の連携は重要ですね。大手企業だと、事業部ごとに別々のツールを導入しているところもありますよね。統合しようとしたときに、プライバシーポリシーが部署ごとで異なるせいで、まず名刺情報を統合することを会社に認めさせないと動けないというケースもあります。

─個人情報についても同時に注意しておかなければならないですね。

庭山:我々はデマンドセンターの要素を、データマネージメント、コンテンツマネージメント、アナリティクスの3つと定義しています。データマネージメントには個人情報保護法やコンプライアンスが関わってくるし、コンテンツマネージメントには知的財産権が関わってきます。だからマーケティングに携わる人間は、個人情報や知的財産権や特許の勉強をしておかないといけません。アメリカと日本のユーザーを比較すると、そのレベルは雲泥の差です。

塚越氏:マーケティングオートメーションが正しく使われていないという問題にも直結していますね。日本のITレベルについては昔から問われ続けている問題ですが、日本の我々のメッセージの9割はツールの使い方にならざるを得ないというのが現状です。マーケティング担当者にマーケティングの方向性を決めるだけのリソースやポジションがなくて、代理店やエージェント任せになっているようではマーケティングの実践的な戦略は生まれませんよね。横軸で引っ張れるのはマーケティング部門だと思いますが、かなりの力が必要だと思います。

庭山:日本企業もマーケティングに対する考え方を変えていく必要があると思います。アメリカみたいにトップがマーケティングであれば何の問題はありません。日本の大手2万社の中でマーケティング部門を持っている会社はどのくらいあるかというと、実は5%もないんです。その中で広告やリサーチのみではなく、デマンドセンターの機能や仕組みを持っていると限定すると3%以下でしょうね。さらに言うとCMOを置いている会社、CMOに該当する人がいる会社は1%にも満たないのが現状です。これは先進国で日本だけです。

─実際にCMOという肩書きの方にお会いされたことはありますか。

塚越氏:ほとんど会ったことはありません。ごくわずかですね。日本の場合は結局、今までモノをつくれば売れたので、マーケティングは必要なかったんでしょうね。

庭山:ただ、悲観的なことばかりではなくて、製造業だけは実は海外で互角の戦いをしているんです。マーケティングなしにですから、本当に製品と営業の足と根性だけで戦っています。
グローバルのマーケティングオリエンテッドの会社と戦っている日本企業はすごいと思いますが、その企業にデマンドセンターを構築すればどれだけ強いかということなんですよ。
ここにきて製造業のMA導入が加速しているように思います。実際の営業現場は、ここから競合企業をひっくり返すのは無理という状況に何度も直面しています。競合はすでに1年前から張り付いていて一緒に問題解決しているので、RFPには競合にしかできない要件が入っているんですよ。もう競合でほぼ確定しているのに、社内規定で3社コンペしなければならないからという状況では勝ち目はありません。
どうしてこんなことになっているのかというと、競合の営業は鼻で嗅ぎつけているわけではなく、マーケティングオートメーションを使ってデマンドセンターをつくっている、とグローバルで戦っている日本の製造業は分かり始めているんですよ。

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