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2020.03.25

新型コロナウィルスショックで今BtoBマーケティングに起きていること

text:シンフォニーマーケティング代表取締役 庭山一郎

新型コロナウィルスショックは、日本のエンタープライズBtoBマーケティングが世界に追いつくためには非常に強い追い風になるでしょう。この追い風を受けてSNSやウェビナーソリューション、Web会議ソリューション、オンラインストレージなどが活況を呈し、SFAやCRMが息を吹き返すでしょう。そういう激動の入り口に我々は生きています。

新型コロナウィルスは世界の様相を変えつつあります。パリやローマの街角から人影が消え、世界の主要空港が止まり、銀座や赤坂の飲食街でも、京都や大阪の観光スポットでも閑古鳥が啼いています。リーマンショックとして記憶されているサブプライムモーゲージクライシスの時ですら見られなかった景色が目の前にあります。
2019年の暮れから始まったこの新型コロナウィルスが日本のエンタープライズBtoBマーケティングにどのような影響を及ぼしているのか、現在進行形で書いてみようと思います。

実は現在の状況は、イベント関連やセミナー・キャラバンなどのリアルチャネル系を除くと大きな追い風になっています。私の肌感覚では、明らかに以下の3つの傾向が起きています。

  1. マーケティング予算がデジタルにシフトしてきた

  2. 滞ってきたマーケティングへの取り組みが一気に進みはじめた

  3. 繋がっていなかったマーケティングとセールスが繋がりはじめた

ひとつずつ説明しましょう。

1. マーケティング予算がデジタルにシフトしてきた

多くの日本のBtoB企業では、展示会出展やセミナー開催予算などのリアルチャネル系は、MAやWebのコンテンツ制作やメルマガ配信などのデジタル系と共にマーケティング部門の予算に含まれます。このリアルチャネル系が今回の新型コロナウィルスの影響で使えなくなっていますから、それがデジタル系に回されてきています。リアルチャネル系の目処が立たないので空中戦にシフトせざるを得ないのです。
さらに、自社や顧客企業の出社や会議制限などで訪問営業が制限された事により、今まで商談のデジタル化に二の足を踏んでいた企業が本格的にデジタル化を推進しようとしています。マーケティング&セールスのDXには大きな追い風が吹いています。

2. 滞ってきたマーケティングへの取り組みが一気に進みはじめた

BtoB企業のマーケティングの普及を阻んでいたのは、実は好景気でした。「自社のマーケティングを強化しよう」「我が社も早くマーケティング組織の構築に取り組むべきだ」という総論に反対する日本企業のマネジメント層はほとんどいません。しかし現実に商談に困っている事業部が無ければ、マーケティングの実ニーズは存在しないことになります。業績が良いと、営業は引き合い案件や顧客のフォローで忙しく、工場や生産現場もフル稼働で仕事ではなく「人」が足りなくて悲鳴を上げはじめます。こうした状況でマーケティングに本気に取り組むのは難しかったのです。その状況が一変する可能性が出てきました。好景気から一転して恐慌前夜の緊張感が出てきたのです。それを肌感覚で感じ取っているマネジメント層はマーケティングに本気で取り組もうと考えはじめています。

3. 繋がっていなかったマーケティングとセールスが繋がりはじめた

日本では2014年からマーケティングオートメーション(MA)の普及が始まりました。米国では2000年から普及が始まっていますから、およそ15年のタイムラグがあったことになります。特にこの3年間で各MAベンダーは大きく売り上げを伸ばし、導入企業数は一気に増えました。ただこの時期は多くの日本企業は好景気で、営業部門の鼻息は荒く、マーケティングの支援を必要しないばかりか協力しようともしませんでした。これはお腹いっぱいの人に料理を食べさせるようなもので、どんなに腕によりを掛けてつくっても満腹の人には食べることは出来ません。それが理由で、多くの企業のMAは先行して導入されていたSFAと繋がっていなかったのです。
本来、マーケティングとセールスを連繋させ、数値で可視化してマネジメントするには、MAとSFAの連繋は大前提です。しかしSFAの運用ルールが各事業部やカンパニーで異なる上に、揃えようとすると声の大きな人達が大反対をするので、どの受注がマーケティング由来の案件(Sales Accepted Lead:SAL)なのか、マーケティングとは関係の無い既存顧客からの引き合い案件(Sales Generated Lead:SGL)なのかすら判らなかったのです。これをしっかり繋いで検証できるように再構築しようという動きが出てきており、今後加速するでしょう。

私は、この新型コロナウィスルはきっと世界を変えてしまうと考えています。数年後、数十年後には、リーマンショック(サブプライムモーゲージクライシス)や911(米国同時多発テロ)のように、〇〇前、〇〇後と呼ばれるようになるでしょう。この環境の急激な変化に対応できない多くの企業は残念ながら存続できなくなり、逆にこの環境変化をチャンスにした多くの企業が躍進するでしょう。人々のワークスタイルが変わり、雇用形態が変わり、会議やカンファレスなどのコミュニケーションスタイルや利用するチャネルが変わるでしょう。そしてもちろん、こうしたビジネス環境の変化はBtoBマーケティングも変えるでしょう。つまり日本のエンタープライズBtoBマーケティングが世界に追いつくためには、非常に強い追い風になっていると私は考えています。もちろん一時的な景気の減速、失注、キャンセルなどでダメージを受ける企業もあるかと思いますが、それでも思いがけない追い風を受けてSNSウェビナーソリューション、Web会議ソリューション、オンラインストレージなどが活況を呈し、SFAやCRMが息を吹き返すでしょう。マクロ経済の動揺は常にミクロ経済を活性化させます。そういう激動の入り口に我々は生きています。

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