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ホーム > インタビュー > スペシャル対談[日本オラクル株式会社] 日本企業が世界で勝つために、今、必要なマーケティングとは?(後編)

製品力・技術力では世界をリードし、尊敬も集めている日本の製造業。唯一の弱点であるマーケティングをグローバルスタンダードにキャッチアップするためのツールとしてマーケティングオートメーションが必要です。本格的に日本市場への参入が始まった今、どのようにしてマーケティングオートメーションを日本企業に普及させていくのか。現状をふまえた事例を通して解き明かしていきます。

日本のマーケティングは製造業から変わる
─日本企業において社長や役職者には、過去に足と汗で稼いできたトップセールスが就いていることが多いと思いますが、マーケティングオートメーションに対する反応はいかがでしょうか。

小島氏:大きく分かれていますね。「うちはうまくいっているから必要ない」とか「取引先が15社だけと限定的で、営業は十分フォローできているから大丈夫」と全く理解いただけない企業も多いです。まだ自社に必要なものではないと耳をふさいでいる印象はありますね。
お打ち合わせに同席されている経営企画の部長さんであるとか、マーケティングの課長さんはすごく興味を示されますが、「実際うちには・・・」と断られることもありますので、お客様の中でのナーチャリングが必要なのかもしれませんね。
「マーケティングオートメーションなどの仕組みが必要だ」とおっしゃっていただけるすごくアンテナ感度の高い経営者もいらっしゃいますが、やはり前者のほうが多い印象があります。

庭山:弊社でもそのようなお客様がいらっしゃいました。
製造業で、上位15~20社だけでビジネスしているので、マーケティングやリードナーチャリングに対して否定的でした。そこに我々が入ってヒアリングしていくと、取引先1社あたり30人くらいの担当営業がついるので「完全にカバーできている」とおっしゃるのです。「その営業の方々が会わなければならない取引先のエンジニアは何人くらいですか?」と聞くと、「8,000人」と答える。製造業の場合では、たとえば社員が20,000人いれば、そのうち8,000人はエンジニアです。そうなるとその8,000人のエンジニアは全国・全世界の事業所にいるので、営業30人ではアテンドしきれないのは明白です。30人の担当営業が1年に1回でも会えるのは、多くても100名程度と考えると、電話さえできていないノーケアな事業所が多々あることになるのです。
そう考えるとマーケティングオートメーションのような仕組みがなければ守ることもできないし、攻めることもできません。製造業は事業所間での情報共有はあまり活発ではない企業が多いですから、継続的にコミュニケーションをとるためにはマーケティングオートメーションのような仕組みが必要なのですね。

小島氏:おっしゃるとおりで、営業担当者が1社30人いればまだしも、2~3人しかいなくてもそれで「うちは大丈夫ですよ」という企業もありました。しかし実際はその2~3人のお客様先に通ってオーダーテイキングしているだけなのです。今のままでいいと感じてしまっている方がとても多くいらっしゃいますね。

庭山:面白いですね。たとえばITでハードウェアやネットワークの場合だと、取引するのは情報システム部門が中心となり、社員が何万人いる企業であろうと1社1部署のキーマン5~6人をグリップしていれば守ることができます。
しかし製造業では事業所単位で意思決定をするので、1社25事業所の研究開発、設計、生産技術などの部門のそれぞれのキーマンとなると数百人単位のエンジニアのデータを保有し、的確に情報を伝えなければ、アップセルもクロスセルもできません。
だから企業と企業に紐付く個人とマルチコンタクトポイントで、コミュニケーションをしてスコアリングするということは、マーケティングオートメーションのようなツールがなければ絶対にできません。Excelを使ってマニュアルでやるという話ではないので、そういうマーケティングを教えながら、あるいは事例として示しながら、ナレッジと同時にこういったツールの訴求を行っていくことが大事だと思います。

小島氏:そうですね。やはりマーケティングオートメーションというツール自体をご存じない方も多く、何ができるのかという認識もないので、現状のままでいいということになってしまうのだと思います。日本企業、特に製造業は賢い方が多いので、キッカケを作ればすぐにキャッチアップできると思います。しかしやったことがないことに対して、できるということをエデュケーションしていくことが必要だと考えています。

庭山:確かにキャッチアップは早いですね。
実は、先日聞いたことのない企業から問い合わせがあり、訪問したところ、素材系の製造業でした。なるべくマーケティング用語を使わないように言葉を選びながら説明したのですが、打ち合わせに出席した方が「ところでシンフォニーのサービスはEloquaとどこが違うのか」と発言されたのです。これには正直驚きました。彼らはしっかりと情報収集して勉強しています。だからマーケティングオートメーションのような仕組みが必要だと気付き始めたらキャッチアップはすごく早いですね。
またグローバルネットワークを持っているので、マーケティングに関しては日本本社が一番遅れていて、アメリカの現地法人は数年前からEloquaを導入しているといった例もあります。そういう状況になると、これ以上アメリカに先走りされると歯止めがきかなくなるので、本社主導で巻き返そうと勉強するようですね。

ブランディングが最優先の日本企業
─日本の製造業はキャッチアップするのは早いとのことですが、一般的な日本企業はマーケティングオートメーションの導入に消極的だと感じます。その理由は何でしょうか。

庭山:自分達のマーケティングや営業のパフォーマンスを定量化して費用対効果で評価されたくないということがありますね。
実はアメリカでマーケティングオートメーションの普及と同時期に、「デマンドジェネレーション」という言葉が普及しました。デマンドジェネレーションとは、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」を合わせた総称ですが、それまで企業内でバラバラに動いており、予算も分かれていました。リードジェネレーションは広報、リードナーチャリングは製品事業部で、絞込みはセールスレップを担当する営業部隊、という感じでした。しかしこれだとROIを出すことができないため、統合しようということでデマンドジェネレーションとしたのです。その統合プラットフォームがマーケティングオートメーションなのです。
しかし日本企業は今も、「展示会はどうですか」とマーケティング担当者に聞くと、「それは広報が担当しています」という答えが大半です。展示会はリードジェネレーションの場であって、ブランディングの場ではないはずです。リスティング広告もWebに訪問してもらいサブスクライブ(ユーザー登録)してもらうためのものなので、広報ではなくマーケティングです。業界紙などへの広告出稿は広報で良いと思いますが、しっかりと切り分けをしなければいけないですね。人が必要であれば、人に予算をつけてコンバートさせるというようにやらなければいけません。

小島氏:確かに日本企業がマーケティングというと、ブランディング色がすごく強いですね。

庭山:自分の仕事に費用対効果というものさしをあてられたくないのです。マーケティングオートメーションを導入したら、全てROMI(リターンオンマーケティングインベストメント:マーケティング投資回収率)で可視化されてしまうわけですからね。
アメリカではマーケティングオートメーションの普及後、CMOの在籍期間が短くなり、今では平均2年を切ったようです。本当に厳しいようですね。

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