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2006.04.10

マーケターとセールスの間に横たわる深くて暗い谷

出典:PowerBiz / 庭山一郎

「受注する」「売上を伸ばす」という単純で明快なミッションを持つ営業部門に対して、マーケティング部門のミッションはあいまいで判りにくいことが多い。時としてこれが、営業部門からは「無駄」と見えたり、「机上の空論」に映るのだ。しかしそれは間違いである。

アメリカの企業と日本企業を比較すると、面白い特徴に気が付く。
日本では、企業経営の根幹であるはずのマーケティング部門と営業部門が不仲で相互理解が極めて不足している。

「営業推進」や「営業企画」あるいは「販売推進」と言ったような呼び方をされることが多い日本のプロダクトマーケティング部門は、一般的に営業部門とあまり上手くいっていない。
その理由は簡単だ。

「受注する」「売上を伸ばす」という単純で明快なミッションを持つ営業部門に対して、マーケティング部門のミッションはあいまいで判りにくいことが多い。時としてこれが、営業部門からは「無駄」と見えたり、「机上の空論」に映るのだ。

販促の資料であるパンフレットを作ったり、展示会のブースを仕切ったりするAD(広告)に近い仕事もあれば、Webのメンテナンスやログ解析などWebアドミニストレーターに近い分野もある。他にもセミナーを企画したり、テレマーケティングを企画したりと仕事は増える一方で、それがあいまいな中で同時に進んでいく。

なぜあいまいなのか・・・。
例えば展示会にブースを出すとしよう。
過去、右肩上がりで業績が伸びてきた時代は、企業が展示会に出展する目的の多くは「ブランディング」であった。顧客や代理店、競合に対して「元気」であることをアピールする。現在も元気で、これからも業界のトップクラスで重要なポジションを占めることを印象付けることが何より重要であった。
こうしたブランディングは製品や企業の競合優位性を高める効果はある。しかし、法人営業の場合、短期的に営業の数値を上げる効果はあまりない。

だからこそ、景気が悪くなり、業績が悪化してコストを削減するという話が社内で出るようになると、展示会の出展コストを正当化するのが難しくなってくる。
昨年から今年にかけて、展示会の出展を取りやめる企業が増えているのはそのせいなのだ。
企業はもう「目的のあいまいな出費」を出す余裕がなくなり始めている。

では展示会にブースを出すことが本当に無駄なのか?
答えは「NO」である。
我々は法人営業のセールスプロセスを以下のように4段階に分解した。あいまいな部分をなくし、どこに科学のエッセンスを導入し、どこに社内リソースを集中させるかを切り分けることで営業の効率化に成功してきた。

  1. リード・ジェネレーション【Lead generation】
    見込み客を集めるフェーズ

  2. リード・クオリフィケーション【Lead qualification】
    集めた見込み客をユニーク化し、コミュニケーションとメンテナンスを繰り返しながらランクアップさせ、絞り込むフェーズ

  3. リード・トゥ・オーダー【Lead to order】
    絞り込まれた上位見込み客にセールスマンが訪問しクロージングするフェーズ

  4. リピート&クロスセリング【Customer Relationship Management】
    既存顧客の購買履歴やコミュニケーション履歴をデータベース化することでマネージメントし、そこからニーズを探り出しクロスセリングを掛けることで効率的に企業や部門の【life-time value】を最大化するフェーズ

これに当てはめて考えると、展示会の出展は「1.リード・ジェネレーション」、すなわち、その目的は一人でも多くの新規見込み客を集めることにある。
しかし、集めた見込み客リストの99%はすぐに営業に渡すことはない。すぐに渡すのは、1%のホットニーズだけである。

残る99%は「2.リード・クオリフィケーション」の段階に進める。
この段階で見込み客を名寄せ(マージ)し、競合や顧客や同じグループ企業の社員など、見込み客リストに不要なデータを削除(パージ)して、ユニーク化された見込み客リストをデータベース化する。そのリストに対してメールやFaxでコミュニケーションを繰り返しながら関心度や見込度を測定し、有望見込み客リストを営業に渡すことを目的に活動する。

ここで絞り込まれた有望リストに対して直接アプローチし、契約まで持っていくのが「3.リード・トゥ・オーダー」であり「営業」の出番である。

さらに、契約してくれた顧客を定期的に訪問し、クロスセリングやアップセリングをかけて顧客との良い関係を維持するのが「4.リピート&クロスセリング」である。

こうしたセールスの循環が出来ていれば、前工程と後工程の関係であるマーケティング部門と営業部門の間に溝が出来るはずがないのだが、実際はマーケティング部門のミッションから「あいまいさ」を排除できないため、より具体的な数値目標を追っている営業との間に乖離が生まれてしまうのだ。

マーケティングと営業の相互理解が進まないもうひとつの原因、それは「気質」の問題である。

上記のセールスプロセスの内、1〜2は農耕型なのに対し、3は狩猟型なのだ。

つまり多くの営業スタッフは鉄砲を背負って野山を駆け回る猟師であり、4ですら、獣道に罠を仕掛ける罠猟師の気質は持っていても、林を切り拓き、畑を作り、種を蒔き、雑草を取り、鳥や動物から守り、健康な苗を選別し、間引きそして時に数年がかりで多くの収穫を手にする農耕型の気質は持っていない。

この農耕型と狩猟型の話は次号に話すことにする。