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2019.02.12

私が米国のマーケティングテクノロジーから目を離さない理由

text:シンフォニーマーケティング代表取締役 庭山一郎

米国のマーケティングテクノロジーは、思考を制限する法規制が少なく、最先端の行動解析の技術が世界中から集積する環境から生まれています。私がなぜ米国のマーケティングソリューションに注目しているのか、また日本との違いについてお話しましょう。

「人は目の前に存在する制限を取り払ってアイデアを考えることは難しい」と私は考えています。現代のBtoBマーケティングは、企業のキーパーソンをいかに効率的に見つけてアプローチするか、また反対に、今はまだアプローチすべきでない人やその人が興味の無いコンテンツまでを探り当てて、間合いを詰める方向に進化しています。この進化のために必要不可欠なのは多面的かつ大量のデータであり、それが無いと分析の精度も上がりません。

そこで問題になるのは法規制です。2018年5月までは、日本は個人情報に関する法規制が世界で最も厳しい国のひとつでした。個人情報保護法特定電子メール法、そして法律ではありませんが10,000社以上が加盟するプライバシーマークには利用目的の通知、開示義務、第三者への提供の制限などがありました。プライバシーマークは、個人情報の管理レベルやプロセスを監査する手続きや組織を規定しています。
こうした制限の下、法規制を考えないでシステムやサービスの設計をするのはかなり難しいことです。場合によっては「あの会社は違法なシステムを作っている」と言われるかも知れません。私はこれが日本のマーケティングテクノロジー企業の進化を妨げている原因のひとつだと考えています。
そして2018年5月に施行されたEUのGDPRの影響で、欧州企業の進化も減速するでしょう。これまではフランス、ドイツ、デンマークなどからセンスの良いマーケティングソリューションが生まれていました。しかし米国のGAFA(Google、Apple、FacebookAmazon)と呼ばれるオンラインジャイアントの勢いを止めるために、クッキーやグローバルIPの使用までを厳しく制限したこの規制の枠の中で、エッジの立ったシステムやサービスを考えるのは簡単なことではないからです。

一方、米国は今でも合法的に個人情報を売買できる国です。登録ユーザー数ではFacebookなどには遙かに及ばないLinkedInが2016年に3兆円近いバリュエーションで買収された理由は、彼らが持っている個人情報の「質」とその「潜在的な価値」なのです。米国やカナダのマーケティングエージェンシーで、キャンペーンのプランニングにLinkedInを活用しない企業はありません。それほど強力なデータなのです。

数年前、米国のあるBtoBマーケティングエージェンシーでミーティング中にこの話題になったことが有ります。彼らは日本や欧州の個人情報に対しての過剰な考え方を理解できないと言っていました。ビジネスパーソンの個人情報が流通すれば、デメリットよりメリットの方がはるかに多いと言うのです。

「イチロウはゴルフをしないよね」
「しないよ」
「じゃ、君のところにゴルフ関連のDMは来ないかい?」
「会員権とかシェアリング型のゴルフリゾートの案内が時々来るね」
「それどうするの?」
「開封しないで捨てる」
「それを日本人は迷惑だって騒ぐよね」
「そうだね」
「開封しないで捨てるのにどのくらいの時間が掛かるんだい?」
「時間よりも日本人的にはもったいないと思うんだよ、高そうなパンフレット入りのDMだから」
「そこだよ!」
「なにが?」
「そのコストを負担してるのは誰だと思う?」
「発送元」
「そう、彼らはチープなデータしか手に入らないから高価なパンフレットやDMを、ゴルフをやらない人にも送るしかないんだ、君は会社の経営者だからその属性データで発送リストを作ったんだよ」
「おそらくそうだね」
「もし経営者の中でゴルフをしない人のデータがあれば、それを使って君を除外してDMを発送できる。君も捨てなくて良いけど、なによりも発送元は無駄なコストを節約できるだろ?」
「そうだね」
「ゴルフ関係のサイトって観る?」
「観ない」
「ゴルフ関係のメルマガって登録してる?」
「してる訳ないだろ」
「ゴルフショップにも行かないし、ラスベガスに行ってもTOP GOLFに行かないんだろ?」
「名前は知ってるけどMGMに宿泊しても行かないね」
「だから米国では君の名前がゴルフ関連のターゲットには入ることはないんだよ。良質な個人情報の流通は社会からノイズを減らすと思わないかい?」
「そういう考え方は日本には無いなぁ・・・」

このように米国では個人情報に関する考え方がまったく違うのです。
しかも、米国で最も勢いのあるマーケティングソリューションベンダーの技術的なルーツを探っていくと、かなりの確率でイスラエルに辿り着きます。テロや紛争を未然に防ぐためにあらゆる人の行動データを収集し、分析する技術が最も進化しているのはこの国です。彼らにとって「インテントデータ(意志の有る行動データ)」とは、爆弾テロをやる意志の有る人の具体的な行動データなのです。このイスラエルで生まれた技術が世界最大の市場である米国で製品化され、米国の株式市場に上場します。そこで調達した資金でさらに技術に磨きを掛けて進化します。

このようなダイナミズムな環境が存在するのは米国だけなのです。

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